チタン溶接において外観品質を求めるなら
スポット溶接がおすすめ
チタンはわずかな加熱でも酸化しやすく、紫や青に変色してしまうため、溶接の外観をきれいに仕上げるのが難しい金属です。特に製品の美観や強度を両立したい場合、溶接方法の選択が品質を左右します。
そのなかでスポット溶接(抵抗溶接)は、電極で局所的に加熱し短時間で接合を行うため、母材全体が過剰に熱を受けにくいのが特徴です。加熱範囲が狭く酸化を最小限に抑えられるため、銀色や金色に近い良好な外観を保ちながら強度を確保できるのです。
(※今回使用した材料はチタン0.8mmの板材と3φの丸棒となります。)
当社では薄板、小物の部品の溶接を得意としており、異種金属接合まで幅広く対応いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
チタンの溶接事例
チタン板材(0.8mm)とチタン丸棒(3φ)
事前の実験や条件出し、また電極棒への工夫によって丸棒を潰さずに溶接をすることができました。
お客様からも外観品質について高評価をいただきました。
チタン溶接の難しさ
チタンは軽量で強度に優れ、耐食性も高いため航空宇宙や医療機器など幅広い分野で利用されています。しかし一方で、溶接が難しい金属としても知られています。
融点が約1,700℃と非常に高く、しかも400~500℃程度という比較的低い温度でも空気中の酸素と容易に反応してしまいます。酸化が進むと表面に硬く脆い層が形成され、加工性や靱性が低下してしまうのです。また、溶接中に気泡や孔が発生する「ブローホール」が生じやすいことも、チタン溶接を難しくしている要因のひとつです。
特に薄板や小径の丸棒では、少しの熱影響でも強度低下や変形につながるため、技術者にとっては非常に神経を使う部分です。

各種溶接方法とスポット溶接の比較
チタンを溶接する方法はいくつかあります。たとえばTIG溶接やMIG溶接といったアーク溶接は広く用いられていますが、シールドガスの管理が難しく、熱影響が大きくなるため仕上がりの色調や外観が不安定になりやすいという懸念があります。また母材へのダメージも残りやすいため、外観と強度を両立させたい依頼では注意が必要です。
レーザーやプラズマ溶接といった方法は高精度ではあるものの、専用の設備や真空環境を必要とするため加工費が高く、対応できる業者も限られるのが現実です。その結果、コストや納期に大きく影響してしまう可能性があります。


これらに比べてスポット溶接(抵抗溶接)は、電極間に電流を流して局所的に発熱させる方法であり、非常に短時間で接合を行えるため熱影響が狭い範囲にとどまります。その結果、母材の変形や酸化による変色が抑えられ、外観品質を確保しやすいという特徴があります。
外観を重視する製品においては、スポット溶接は有力な選択肢となります。
また、チタンは本来、表面に不働態被膜と呼ばれる酸化膜を形成しているため、優れた耐食性を示します。しかし溶接のように高温にさらされると、この保護膜が失われ、むき出しになったチタンが急速に酸化します。その結果、溶接部の色調が変化しやすく、銀色や金色の良好な状態から、紫色や青色、さらには灰色や白色へと進行してしまいます。
外観が損なわれるだけでなく、機械的な性質に悪影響を及ぼす点も見逃せません。その点、スポット溶接は短時間の加熱で接合できるため、不働態被膜の破壊や酸化の進行を最小限に抑えやすく、外観品質を重視する製品に適した工法といえます。