抵抗溶接による異種金属接合
異種金属を溶接するなかで一番難しい点は、同じ材質で同じ厚み同じ面積でも同じ溶接条件でくっつかないことがあります。
例えば同じ材質でも材料のメーカー様が違ったり、同じ材質の材料でも色合いが少し違っていたりすることがあります。参考条件として色々な異種金属のデータ資料を取る必要性もありますが、最終的には実際のものを溶接してみて判断しています。
溶接条件が出て生産に入った場合、数を打つことになるので全て良い状態をキープするには管理が重要です。
弊社ではt=0.05mm〜の薄板・小物の溶接を得意としており、多種多様な異種金属同士の接合事例がございます。
対応事例
・アルミ×銅
・ステンレス×鉄
・ステンレス×ニッケル
・ステンレス×黄銅(真鍮)
・ステンレス×燐青銅
・ステンレス×銅
・ニッケル×黄銅
・ニッケル×燐青銅
・ニッケル×銅
・黄銅×燐青銅
・黄銅×銅
・燐青銅×銅
異種金属を溶接する際の注意点
1. 電位差による腐食
異なる金属を接合すると、電位差が生じるため、特に電気化学的な作用によって腐食が進行しやすくなります。例えば、ステンレスとアルミニウムの組み合わせでは、アルミニウムが腐食しやすくなることがあります。このため、設計段階で腐食のリスクを考慮し、適切な防食処理を施すことが重要です。
2. 融点の違い
異種金属間で融点が大きく異なる場合、一方の金属が溶ける前に他方が溶け落ちてしまうことがあります。例えば、アルミニウム(融点約600℃)と鉄(融点約1500℃)を接合する際には、鉄が溶ける頃にはアルミニウムが既に溶け落ちてしまうため、適切な溶接条件を設定する必要があります。
3. 使用する溶接棒の選定
異種金属を接合する際には、その特性に合った溶接棒を使用しないと、成分が希釈されてしまい、強度低下や割れを引き起こす可能性があります。例えば、銅とアルミを接合する場合はタングステン製の溶接棒を使用することで、成分の希釈を防ぎます。
異種金属の接合実験事例7選
アルミ(0.2mm)×銅(0.2mm)の接合
特にアルミ1000番台同士の抵抗溶接は融解温度が約650℃と低く、粘り気がないため通電時、溶けたときに散っていく感じがあり、強度が出ないのが特徴です。
画像に写っている白い粉はアルミの破片です(その他の実験で検証していた為) 今回のアルミは多少、粘り気がありました。
接合は成功しました。
▼ 引張試験を行い強度を確認(結果4.8㎏47N)破断2/2
コイン電池×ニッケル/ステンレス/鉄ニッケルの接合
ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS430)、鉄ニッケル(Fe-Ni)をコイン電池の表裏に溶接した事例です。1打2点でスポット溶接をしています。
破断状態を確認すると、三種類の材料(ニッケル・ステンレス・鉄ニッケル)が非常にくっついている状態です。
ニッケル合金(0.1mm)×ステンレス(0.05mm)の接合
ニッケル合金0.1㎜単線とステンレス0.05㎜単線の接合事例です。
ステンレス0.05㎜単線は釣り糸で一番細い糸(0.1号数)とほぼ同じ細さです。抵抗溶接ではステンレスの接合は難しくありませんが異種金属との接合は金属によって接合が難しいものもあります。ニッケル合金が社内にありましたので接合できるか実験してみました。
0.05㎜のsus線の溶け方が良く、綺麗で強い接合ができました。
ニッケル(0.5mm)×銅(1mm)の接合
こちらはニッケルと銅をプロジェクション溶接にて接合した事例です。
プロジェクション溶接とは、被溶接材が極端に板厚が異なる場合にプレス加工などによりプロジェクション(突起物)を設けてプロジェクションを加圧し、集中して大電流を流すことによって発熱を誘導して、プロジェクションを溶かすことによって母材同士を圧着させる抵抗溶接の一種です。(平板の他、ナットやボルトなどの溶接にも用いられます。)
短時間で効率的に出来るほか、熱による変形が出ないため仕上がりが綺麗になるなどの特徴があります。
ステンレス(0.1mm)×ニッケル(0.2mm)の接合
ステンレスとニッケルの薄板同士の接合事例です。
お客様からのご要望によりスパッタを可能な限り無くしてほしいとご依頼を頂き溶接条件の設定から挑戦させて頂きました。
ステンレス(0.1mm)×白金(0.1mm)の接合
薄板のステンレスに、白金線を接合した事例です。
微細線の溶接は線自体が脆く溶接が難しいものです。微細線の線を潰さずに接合させるためにはノウハウが必要です。
鉄(0.1mm)×白金(0.1mm)の接合
同じく微細線の接合事例として、白金線の0.1φを厚み0.125mmの鉄材に接合させた例です。
※ 白金線以外にも銀線(厚み0.1mm/幅0.5mm)の溶接も可能です。